小説 闇に香る嘘
久しぶりの更新です。
今回紹介するのは、第60回江戸川乱歩賞の受賞作品です。
もちろん、ネタバレなしで。
この小説は、主人公が全盲であり、中国残留孤児、臓器移植が絡む話です。
ジャンルはミステリーですが、あらすじだけを読むと、少し重たく感じてしまう人がいるかもしれません。
しかし、そこは堂々たる江戸川乱歩賞受賞作品。
読んでみると、視覚情報のない主人公の、聴覚や嗅覚で捉える世界の中にたちまち引き込まれてしまいました。
それと、色々な「気付き」が・・・・・・
目の不自由な人の立場で世の中を視る。本当に色々な気付きをくれた一冊でした。
著者は文献を参考にし、おそらくは取材をしているものと思われます。
全盲の主人公の視点で、危険と隣り合わせの日常や、他人との関わり方などを描きつつ、耳が捉える音の差異や、手に持った杖の先から伝わる感覚の機微が上手くミステリーに取り入れられています。
全盲の主人公ゆえに、面前に立つ人物を読者は常に疑わなければなりません。
著者の策略通り、読み手は緊張感に苛まれ、時間を忘れて読書に没頭するのです。
こうまで言うと、ミステリー好きはスルーできないでしょう。
興味のある方は、一度読んでみて下さい。
余談ですが、本の表紙カバーが二重なんですよね。
ぱっと見は、タイトルの「闇」の字に掛かるように真っ黒い表紙カバーなんです。
しかし、そのカバーの下に本当の表紙カバーが隠れているんですよ。
憎らしい演出ですよね。
へるめーす君check!
※ミステリー大好き:★★★☆☆
※通勤通学のお供に:★★★☆☆
※斬新な視点 :★★★★☆
※トリックが命 :★★★★☆